マンションやアパートといった集合住宅のインターネット回線で未だに採用されることも多い「VDSL」という配線方式について。
2000年代前半では、VDSLではなく「ADSL」という配線方式が主流でした。
「・・・あれ?VDSLとADSLって何が違うんだっけ?」
きっとそんな方も多いのではないでしょうか。
この記事では、VDSLとADSLの違いについてまとめてみました。
VDSLとADSLの「共通点」は?
まずはVDSLとADSLの違いの前に、共通点を先におさえておきましょう。
VDSLとADSLにはどちらも「DSL」という横文字がつきますよね。
DSLとは、デジタル加入者線(Digital Subscriber Line)の略、いわゆる電話回線のことです。
つまり共通点は、
「 いずれも電話回線素材(DSL)を使用したインターネット回線である 」
ということです。
ちなみに今のインターネット回線の素材は「光ファイバー」が主流となってきていますので(後述)、この光ファイバー回線と明示的に区別するためにDSLは別名「メタル回線」と呼ばれます。
この電話回線(メタル回線)は、どんなに古いマンションやアパートであってもほぼ確実に存在する設備です。
既設の通信設備をそのまま回線素材として使い回すことから、ADSLやVDSLはいずれも
- 開通コスト(工事費)が安い
- 開通スピードが早い
という共通の特性があります。
一方で、メタル回線のADSLとVDSLの通信速度は
- 光ファイバー回線と比較して圧倒的に遅い
という共通のデメリットも存在します。
VDSLとADSLの「違い」は?
VDSLとADSLの違いはずばり、電話回線(メタル回線)で使用する電気信号の周波数が異なるという点です。
この電気信号の周波数の差は、以下の2つの伝送性能に大きく影響してきます。
- 最大通信速度
- 最大通信距離
科学の物理法則としてですが、「伝達速度は周波数の高さに比例して速くなる」という性質があります。
その一方で、「伝達エネルギーは周波数に高さに反比例して弱くなる」という面もあります。
これは地震に例えると非常に分かりやすいかと思います。
というのも、VDSLとADSLはちょうど地震のP波とS波の関係にあたります。
◆VDSL & ADSLの比較表
xDSL種別 | 周波数 | 通信速度 | 通信距離 | 地震に例えると? |
ADSL | 低周波数 | ×遅い | ○長い | S波(遅いけど、伝達エネルギーが強い) |
VDSL | 高周波数 | ○速い | ×短い | P波(速いけど、伝達エネルギーが弱い) |
VDSLもADSLも「古くて遅い」インターネット回線である
上の比較表ではVDSLをあえて「速い」と表しましたがそれはあくまでADSLとVDSLを比較した場合であり、いずれも古くて遅いインターネット回線です。
というのも、DSLはメタル回線素材の宿命により、光ファイバー回線と比較してたった10%程度の性能しか発揮できません。
このVDSL回線と光ファイバー回線の性能の違いや配線方式の変更方法については、以下の記事で別にまとめています。